Rust

Rustの特徴

はじめに

Rust は 2015 年に正式にリリースされ、現代のプログラミング言語として注目を集めています。

その理由の一つは、非常に高速な実行速度を誇る点です。
低レベルの制御と最適化が可能なため、OS や組み込みシステムからWeb アプリケーションまで、
幅広い分野で活躍できるのが大きな魅力です。

また、安全性が強固に担保されており、実行時のトラブルやセキュリティ上のリスクを低減し、
信頼性の高いソフトウェアの実現が可能です。

本記事では、これらの特性を踏まえ、以下の Rust の特徴について詳しく探っていきます。

Rust の特徴

  • 高速な実行速度
  • モダンな文法の網羅
  • OSからWebアプリまで幅広い実装領域
  • 強固な安全性
  • 互換性を担保するエディション戦略

 

高速な実行速度

Debian プロジェクトの Benchmark Games は、Rust の高速な実行速度を具体的に示す一例です。

Benchmark Games では、同一アルゴリズムを複数のプログラミング言語で実装し、
そのパフォーマンスを比較することで各言語の性能を比較検証しています。

Rust は、プログラミング言語の中で最も速いと言われている C 言語や C++ に匹敵する、
あるいはそれ以上の速度を発揮する評価項目もあり、高く評価されています。

これにより、実際のシステム開発やパフォーマンスが要求されるアプリケーションにおいて、
Rust の選択が合理的であることが裏付けられています。

なぜ Rust の実行速度は速いのか?

  • コンパイラにより実行可能バイナリ(マシン語)が生成される
    C 言語や C++ と同様に、Rust もコンパイル後の最終結果はマシン語になります。
    JavaやPythonなどは、コンパイラやインタプリタを介して仮想マシン用の中間言語が生成され、
    実行時に仮想マシン(ソフトウェア)がそれを解釈して実行されるため速度面で不利になります。
  • ゼロコスト抽象化を追求している
    こちらの Qiita 記事で紹介されていますが、ゼロコスト抽象化の実現に向けた設計思想に基づき、
    高レベルな抽象表現を活用しながら実行時のパフォーマンスに妥協しないことを追求しています。
    「ゼロコスト抽象化」とは、プログラマーが抽象的な記述や高度な概念を利用しても、
    コンパイル後の実行時に余分なオーバーヘッドが発生しない、という設計方針を意味します。
    つまり、抽象レイヤーの導入による性能低下がなく、低レベル言語で記述した場合と同等、
    あるいはそれ以上の高速な動作が実現されています。

 

モダンな文法の網羅

Rust の言語機能や文法は、多くのプログラミング言語から優れたアイデアを取り入れて設計されています。
他の言語で実績を残している良質な文法が数多く採用され、モダンな機能が幅広く網羅されています。

その結果、開発者は直感的かつ効率的にコードを書くことができる環境が整えられています。

例えばどんな文法?

  • 可変(mutable)・不変(immutable)
    PHP や Java などでは意識して使い分けることが当たり前となっている変数の宣言です。
    Rust では let によって変数を割り当てることができ、Rust の標準は「不変」です。
    let mut で可変な変数を宣言できます。
  • コレクション操作
    JavaScript や Java でも利用できる関数型プログラミングのスタイルが由来の操作です。
    filtermap などの操作は、可読性の向上にも貢献する記法です。
  • 型推論
    Kotlin や Go などの言語に導入されており、C++ などにも型を指定しない記法が導入されました。
    型が未決定の状態で宣言し、利用するときに型が決まるという仕組みです。

 

OSからWebアプリまで幅広い実装領域

Rust は、組み込みシステムやオペレーティングシステムのような低レベルな実装だけでなく、
高機能な Web アプリケーションの構築にも適した、極めて広範な実装領域を持つ言語です。

これにより、ハードウェアに近い部分の制御が求められる領域から、
ビジネスロジックや UI の構築に至るまで、多様なニーズに柔軟に応えることができます。

また、豊富なライブラリやツール群と組み合わせることで、開発者は各種プロジェクトにおいて、
効率的でかつ堅牢な実装を実現しやすくなっています。

どのような記事・事例がある?

  • 低レイヤー
    Rust がシステムプログラミング言語であることから、OS を書くチュートリアルが充実しています。
    Writing OS in Rust などが有名です。
  • 組み込み開発
    OS と同様に、組込み開発を行うチュートリアルも充実しています。
    Making a RISC-V OS using Rust などが有名です。
  • Web アプリケーション
    Rust 公式の調査によると、Rust の最も多い用途は Web アプリケーションのバックエンド開発。
    actix-web などのフレームワークが有名です。

 

強固な安全性

Rust は、全体の設計において安全性が最重要視されています。

どんな安全性?

  • メモリ安全
    メモリ安全については、所有権や借用をはじめとする独自の仕組みにより、
    ポインタ操作やメモリ管理に起因するエラーを防ぐよう設計されています。
    これにより、実行時に不正メモリアクセスやメモリリークが発生するリスクを大幅に低減しています。
  • スレッド安全
    スレッド安全においても、Rust は静的な解析に基づいた設計が施されており、
    マルチスレッドにおけるデータ競合の発生をコンパイル時に検出します。
    これにより、実行時に予期せぬ不整合が生じる可能性が劇的に減少しています。

これらの安全性チェックは全てコンパイル時に実施され、問題が検出されればエラーとなるため、
潜在的なバグは実行前に排除される仕組みとなっています。

 

互換性を担保するエディション戦略

Rust では、エディションが存在します。

どんなエディション?

  • 2015エディション
    2015 年に Rust のバージョン 1.0 がリリースされ、2018年のあるバージョン以前の Rust を
    2015エディションと呼びます。
  • 2018エディション
    2018 年に一部の文法を互換性のない形で変更されました。
    その変更以降の Rust を 2018 エディションと呼びます。

エディション戦略は、言語機能の追加や改善を行う際に後方互換性を維持しながら、
段階的な進化を可能にするために導入されました。

各エディションは、プロジェクトまたはクレート単位で切り替えることができるため、
既存のコードベースに影響を与えることなく、最新の改善を取り入れやすい環境が整っています。

 

おわりに

ここまで、Rust の多様な特徴と、その設計思想に基づく実装のメリットについてご紹介しました。

実行速度の高さや安全性、モダンな言語機能、そして幅広い実装領域を実現するための各種仕組みが、
Rustを現代の開発環境で魅力的な選択肢としています。

Rustが新たな学習の入り口となり、プログラミングの可能性を広げる一助となれば幸いです。

 

参考

 

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SANACHAN

SANACHAN

「生涯一エンジニア」を掲げ、大手グローバル企業でSE/PGとして8年勤め、キャリアアップ転職した現役のエンジニアです。世にあるメジャーな全プログラム言語(コボル除く)を自由に扱えます。一児の父。自分のため、家族のため、日々勉強してます。システムエンジニア、プログラミングに関する情報を蓄積している雑記帳です。

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