書籍紹介

『Tidy First? 個人で実践する経験主義的ソフトウェア設計』のすゝめ

はじめに

Kent Beck 氏の著書『Tidy FIrst? 個人で実践する経験主義的ソフトウェア設計』をご紹介します。

ソフトウェア開発において、コードの整理や設計の改善は重要な課題です。

しかし、現実的な開発の現場では、限られたリソースや納期の中で、
どのようにして設計を改善すればよいのか迷うことが多いのではないでしょうか。

Kent Beck氏の書籍「Tidy First? 個人で実践する経験主観的ソフトウェア設計」は、
その疑問に答える一冊で、リファクタリングよりも小さな単位で整理するやり方を記しています。

本記事では、この書籍の内容をご紹介し、その魅力をお伝えします。

 

紹介する理由

「Tidy First?」は、リファクタリングよりも小さな単位でコードを整理する手法を提案しています。
この手法を Kent Beck 氏は「片づけ(Tidying)」と呼び、リファクタリングの一部として位置づけています。

片づけはコードの振る舞いを変えない点でリファクタリングと共通しながらも、
より即効性があり、個人レベルでの実践が可能です。

 

さらに、本書は 16 年ぶりとなる Kent Beck 氏の新作であり、
個人レベルでソフトウェア設計を改善するための具体的なヒントが記されています。

リファクタリングを技術的負債の返済としか捉えられていない組織に対して、
「片づけ」という新たな視点を与える内容が含まれており、設計に直結するガイドとなっています。

 

著者の紹介

著者の Kent Beck 氏は、エクストリーム・プログラミングの考案者であり、
テスト駆動開発(TDD)のパイオニアとして知られています。

また、デザインパターンの普及にも貢献し、リファクタリングに関する業績が評価されています。

「Tidy First?」では、彼の豊富な経験が凝縮された洞察と実践的なアドバイスが詰まっています。

 

概要と構成

本書では、全編を通してコードの「整頓」について記されています。

整頓術「How」管理術「When」理論「Why」の3部構成となっており、
読者自身「Who」を前提として、個人レベルでの実践が可能なように書かれています。

整頓術「How」

整頓のテクニックが 1 章ごとに具体例を交えて解説されています。
読みやすいコードを作るための実践的な方法が紹介されています。

設計の基礎を学んだ経験がある人にとっては、既に馴染みのある内容が多いため、
確認程度にさらっと読み進めるのが良いでしょう。

 

また、この部では「リーダブルコード」でも触れられているような、
適切な凝集度の維持や関心の分離、変更しやすいコードを保つための小技が多く紹介されています。

以下の「リーダブルコード」を読んだことがない方にとっては、この章を読むだけでも、
短時間でコーディングスキルが向上する可能性があります。

管理術「When」

開発プロセスの中で、どのような順番で、どの程度の整頓を行うべきかが記されています。

  • 整頓の開始・終了のタイミングと判断基準
  • 小さな単位(整頓単位:バッチ)での整頓
  • 整頓の方法とタイミングの選択肢と使い分け
  • 効率的な整頓の指針

これらの指針により、効率的で無理のない整頓プロセスを構築できることが強調されています。

理論「Why」

本書のメインテーマであり、ソフトウェア設計の本質や、
振る舞いと構造の関係について深く掘り下げています。

結合性、凝集性、コード整理の費用対効果など、
ソフトウェアデザインの背後にある理論を学ぶことができます。

また、ディスカウントキャッシュフローとオプションの比喩を用いて、
整頓を先にすることと、整頓を後回しにすることとのトレードオフが論じられます。

SANACHAN
SANACHAN
技術的負債キャッシュフローなど、金融系のメタファーが多いですね。

 

読みやすさとスタイル

Kent Beck 氏の文章は、シンプルで分かりやすいスタイルが特徴です。
専門的な内容でありながら、具体的な事例や比喩を交えて説明されており、
読み進めやすい構成になっています。

また、各章は独立したテーマごとに分かれており、
自分が興味のある部分から読み始めることも可能です。

 

まとめ

「Tidy First?」は、個々の開発者が自らの手でコードの整理を行い、
プロジェクト全体の改善につなげる方法を具体的に示してくれる書籍です。

その実践的な内容と、Kent Beck 氏の経験に裏打ちされた深い洞察は、
すべてのソフトウェア開発者にとって価値のあるものです。

日々の開発をより良くしたいと考えている方は、ぜひ手に取ってみてください。

 

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SANACHAN

SANACHAN

「生涯一エンジニア」を掲げ、大手グローバル企業でSE/PGとして8年勤め、キャリアアップ転職した現役のエンジニアです。世にあるメジャーな全プログラム言語(コボル除く)を自由に扱えます。一児の父。自分のため、家族のため、日々勉強してます。システムエンジニア、プログラミングに関する情報を蓄積している雑記帳です。

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